Mac + iPhone

仕事にもプライベートにも、この2つのデジタルガジェットのパワーユーザーである。

Macintosh(Mac)は大学一年生のとき、建築家の槇文彦氏が設計したTEPIAの見学にいったときに、偶然にAppleのイベントがTEPIAで行われていて触ってみた。まだwindowsもなく、DOSやPC98の時代に「簡単に任意の図形を任意な場所に描けて移動もできる」ことに衝撃を受けた。が、しかし当時は高値の花であった。

初めて本格的にMacを使ったのが1994年、まだまだ手書き図面が主流だったころに、事務所の先輩が自腹で買ったSE30を事務所に持ち込んでCADを運用し始めた。そこからわずか1~2年後にはコンピュータで全ての図面を描くようなり、1997年にはインターネットとE-mail、そして携帯電話を、1998年にはデジタルカメラを使い始めた。「CADで描いた図面なんて...」といった議論も今は懐かしい。

今思えば建築設計をとりまく業務環境はほんの数年という短い期間で、ずいぶんドラスティックな変貌を遂げたものだ。

いや、仕事だけではない、生活も大きく変わった。1997年にはエリック・クラプトンの武道館でのライブチケットや、南洋堂から建築専門書をネットショッピングしていた。当時は28歳と若く、適応力や新しいものへの興味もあったのかもしれない。

ノート型のPowerBookをメインのマシンに切り替えたのが、1999年ころ。すでに独立していたが、多摩美術大学の実施プロジェクトや退職した師匠の事務所からの仕事もいくつか手伝っており、複数の仕事場で同時並行のプロジェクトをこなすことになった。自身の仕事も含め社外の仕事仲間達とネットを使って実施設計を共同で作業をしていた。携帯電話とノート型のコンピュータがあればインターネットに接続でき、どこでも自分の環境で仕事ができる。

時間と場所と共同作業の概念を大きく変えた。

僕が大学を卒業するころには携帯電話が実用され始めたので、キャンピングカーに製図板を置いて「現場でもどこでも図面が描ける移動事務所があれば便利だなぁ」と、そんなことを妄想していたが、いやいや、いともあっけなく簡単に、しかももっと小さくて便利に実現した。

ちょうどPowerBookもG3になり、性能的にも価格的にもメインマシンとして実用性が高まった時期でもり、それ以来、国内外問わず、どこにいくのにもMacを携行するように。area045の仲間のひとりをまねて、マウスを使わずにトラックパッドで図面を描けるように練習したので、電車や飛行機のなかやコーヒーショップはもちろん、自宅や旅行先でもダインングテーブルやベッドの上でも気の向いた場所で、エスキスやプレゼン用の基本設計図を描いている。これは便利!

2004年からは手書きのシステム手帳を持ち歩かなくなり、スケジュール管理やアドレス帳、メモ書きも全てMacを使うようになった。建築は住宅でも1年以上、ちょっと大きなプロジェクトだと3年とか10年とかの長いスパンになるので、デジタルでスケジュール管理をすると5年前の打合せの記録もすぐに引出せる。(この原稿もサッと別のウィンドウで過去の記録を見ながら書いてマス。) iPodもこのころに購入しており、手持ちのCD全てをMacとiPodに詰め込んで日常的に音楽を聴くライフスタイルを取り戻した。さらに2008年のiPhoneの登場で、携帯電話とMacとの同期もほぼ満足できるようになり、ごく簡単なこと、例えば現場で障害物がある場所で配置寸法を確認する際に、事務所のスタッフに別なポイントを指示してCAD上で実測した数値をPDFでメールしてもらう、...などなど、このようなこともiPhoneがあればサッと済むようになった。

最近ではFaceBookの登場で遠方の友人との交流や非常時の情報伝達、クライアントとの付き合い方も変わりつつある。これまでが独立して関わりあうことがなかったコミニティが連続してつながりだしたのだ。学生時代の友人と仕事のクライアントが思いがけず並列的につながる。これは面白くもありちょっと怖いかも...。

このように便利さを享受する一方で、アメリカで撮影したL.I.カーンやミース.ファン.デル.ローエ、F.L.ライトの建物の写真をほぼ全滅させてしまうなど、デジタルデータの怖さも味わった。(これはしばらくヘコんだけど、これを理由にまた行けばいいやと...)

しかし、すでにすっかりデジタルインフラなしで仕事も現代的な生活も送れなくなってしまった、年間を通じてMacとiPhoneに触れない日はまずないだろう。

でも所詮、道具は道具。いくら時代が変わっても、仕事や生活を営むうえで変わらずに、いちばん大事なのは人と人との縁だと思う。

CADだろうが手書きだろうが、メールだろうが電話だろうが自分が考えたことを第三者に伝え、相手の考えを受け取る。

やはり直接会ってのコミュニケーションに勝る物はない。

ということで、今日はFacebookで10年ぶりにつながった友人とこれから街にでてきます。

乾杯!(笑)

(中村高淑)

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