大谷石について
先日、建築家協会の催しで宇都宮へ行く機会が有った。
宇都宮は大谷石の産地として有名で、建物や塀に使われた多くの例や、採掘場を見る事ができた。
しかし今まで自分が設計した建物に大谷石を使った事は無い。
大谷石は脆くて風化し易いとされているので、石を使う時には大抵大谷石より大理石、大理石より御影石、と言うようになってしまう。
でも考えてみれば、木や金属など他の材料の耐久性にもそれなりに限りは有るのだから、石にばかり高い性能を求めるのはおかしいのかも知れない。
例えば杉や檜などの柔らかい木材と御影石を合わせて使うと、感覚的に木の方が負けてしまって不釣り合いになる事が有るが、大谷石であれば相性はずっと良いように思う。
建物に大谷石を使った例として思い浮かぶものの一つに、坂倉順三が設計し、1951年に完成した神奈川県立近代美術館が有る。
そこではピロティの壁に大谷石が使われていて、隣り合う鉄骨や外壁のアスベストボードと共に、建物ができた時代にふさわしい清清しさと親しみ易さ、そして今でも色褪せない品の有さを感じさせる。
その良質な素材感は、コンクリートブロックでも大理石でも得られなかったに違い無い。
自分が設計する建物に大谷石を使うとしたら、このような使い方をしてみたいものだと思う。
(栗原正明)
0コメント