女中部屋・小さいおうち/中島京子

明治から昭和初期にかけての住宅プランをみると、台所の隣に畳にして二・三畳の部屋を見つけることができます。現在の感覚でみると、パントリーか納戸かと思われるような位置と狭さですが、これは女中部屋です。


現代では、女中というと差別的言葉に響きますが、戦前までは、結婚前の花嫁修業のようなものだったようです。「小さいおうち・中島京子著」はそんな、女中「タキ」の目を通して、日本が二・二六事件から太平洋戦争にむかう時代が語られています。


戦後生まれの作者ですから、実際に経験したことではないだろけれども、生活の描写が生き生きとしています。贅沢な食料品が手に入らないなかで、タキが工夫する料理や、軍歌かなにかの振り付けなどによって、当時の様子はこんなだったのかと面白く感じます。


戦争に進んでいく時代ですが、のんびりとしていて、淡々とした生活が描かれています。女中奉公と聞くと、つらい労働なのではと思いますが、北側の2畳ほどの女中部屋を終の棲家にしたいと思うほどに、タキはとても幸せそうですし、女中に誇りを持っているのです。


僕がこの小説を読み始めて部屋に置いておいたら、相方が横取りして読み始めました。面白いらしく返してくれません。しきりに「怖い」「怖い」と言いながら、読んでいました。


女中の目を通した日常が書かれていて、戦争の惨劇が直接的に書かれているのではないのですが、戦争の暗澹が迫ってくるのです。「茹で蛙」と言う喩えがあるそうです。蛙を熱湯に入れると、直ちに飛び跳ね脱出するのに、穏やかに温度が上がる湯に入れると、温度の上昇が知覚できなくて死んでしまうのです。


戦争は宣戦布告して突如として始まるのではなく、徐々に戦争に進んで行ってしまい、気が付いたときには泥沼だったということでしょうか。いままさに、原発事故以降、また茹で蛙のようになっているようで「怖い」のです。

(横山敦士)

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