横浜駅の北側にかかる歩道橋

自転車をお使いの方。横浜の東口側から、西口側に行くのに、どのルートを使うか迷ったことはありませんか?

正規のルートは、北側にある青木橋か、南側にある平沼橋を渡って西口側を目指すことだと思いますが、相当な回り道ですし、どちらの橋も坂がきつい。

人の目を完全無視できる強心臓の持ち主でしたら、地下にある中央口の歩行者道を、自転車を引っ張っていくルート。しかしこちらも、自転車を担いで階段を上り下りする必要があるのと、常に混んでいる横浜駅の歩行者道を、自転車を引っ張りながら進むわけだから、意外と時間がかかってしまいます。

そこで私は、今回紹介する、横浜駅北側にかかる歩道橋をよく使っていました。

自転車を担いで上り下りするのは、中央口の歩行者道と変わりないのだが、こちらは使用者数が少ないことと、そこから見下ろす景色が圧巻ということで、好んで使っていました。

最近では、横浜駅北口が完成したため、どこにあるかが一層わかりにくくなりましたが、このコラムを書くにあたって久しぶりに見に行ったところ、昔のままのたたずまいで存在していました。

最近では、親子鉄道ファンが多いと聞いていましたが、10分くらいの滞在中、熱心に電車を見ている親子がいました。鉄道ファンでない私がみても、京急・JRの電車が次から次へと眼下を疾走する光景は、迫力満点で、臨場感たっぷりです。

疾走する電車の姿もさることながら、バックの風景がまたいいんです。横浜駅側を望めば、駅前の高層ビルをはじめ、みなとみらいのランドマークタワー。青木橋側を望めば、二段構成の高速道路の奥に中層のビルが建ち並ぶ。おもしろいのは、線路に向かっている表情がどれも裏の顔ということ。電車の騒音を遮らなければいけないし、こちら側からアプローチが取れないので、当たり前かもしれないけれど、デザインや仕上げにあきらめ感が漂っています。こういうのって、建築の恥部を見ているようで、ゾクゾクしてしまいます。

この素敵な景色を成り立たせているのは手すりのようです。公共歩道橋の手すりとしては、横桟の上、スカスカで見通しがよいのです。昔、安藤忠雄氏が、手すりが景観の邪魔として、水辺に建つ商業空間の水際の手すりをつけなかったという逸話を聞いたことがあります。現代社会は安全のために様々な景色を犠牲にしています。そのアンチテーゼとしても、この歩道橋は残ってほしいものです。

ここで夜景を眺めた後、狸小路で一杯やりたいなぁ。そんなことを考えてしまいました。

横浜駅北側にある歩道橋。最低限の機能を満足させる形が、むしろかっこいい。

京急とJRの車両を眼下に望む。昔はさらに東横線が並んでいた。

(藤江 創)

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