日劇解体
2005年2月に閉館となっていた黄金町の老舗映画館「日劇」が再生への模索の道もかなわず、ついにこの4月より取り壊しが始まることになったそうである。
近所でもあり、取り壊し前に最終上映会があるというので、その最終日に初めて日劇に足を踏み入れてみた。
上映されたのは「ニューシネマパラダイス」。皆さんご存知の通り、閉館される古い映画館を舞台とした映画。2時間半ほどの物語の中で子供が青年となり、そして大人へと成長して30年ぶりに帰郷するという時間軸と、日劇がたった今終えようとしている50年ほどの歴史がその場所でクロスオーバーするというなかなか得がたい経験をさせてもらった。まさにそこでその時しか観られない映画だったような気がする。
1957年築ということでたかだか50年ほどの歴史しかもっていない建築でありながら、それ以上に横浜の人たちの記憶に深く残る建物だったようである。
うちの事務所の目と鼻の先にも、同じように古くて小さな映画館がある。レトロな雰囲気をもった日劇に比べれば、そっけない内装のもっと小さな映画館なのであるが、ここでしか観られないような小作品を毎年ヒットさせていて、隆盛のシネコンに負けず奮闘している。
シネマコンプレックスに限らず、家庭でもDVDやネットでいつでも気軽に映画が観られるのはとても便利なことには違いないが、商店街の中にお年寄りや子供たちが楽しみにくる小さな映画館があると、どことなく街に文化の香りがして少しほっとする。ずっと長く頑張って欲しい。
(水口裕之)
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