3Bの芯

昨日チェコ旅行から帰ってきたばかりで、まだ時差ボケしている。およそ2年ぶりぐらいの旅行になる。今はこのことに纏わることしか浮かばないので、雑感めいたことを書かせて頂こうと思う。

とは言ってもチェコの建築様式について語ろうというわけではない。

最近鉛筆というものをあまり握らない人も多いかと思うが、私もご他聞に漏れず鉛筆どころか、ペンの類もあまり使わない。ちょっとしたメモ書き程度にボールペンを使うか、マーカーでアンダーラインを引くぐらいである。

あとはモニターに向かってキーを打つという作業が大半である。現に今もこうしてキーボードとモニターに向かっているのである。

話が戻るが、3Bがなぜ旅行と関係があるのかというと、スケッチ旅行を1~2年に一度続けているからである。

色々な画材を試してみたが、F2サイズのスケッチブックに3Bの鉛筆で下図を描き、淡彩で色をのせるのが合っている。これが速く描けてごまかしが効きやすい。正確に言うと最近は鉛筆でなく、ホルダーに太目の3Bの芯を入れて使っている。こだわるほどではないが、2Bだと線が少し硬いし、4Bだと太くてぼやける感じがする。日頃、デジタル機器を使って仕事もプライベートも過ごしているが、こういう手の動かし方は正反対の作業である。そして、機器に頼り効率化された日常生活から、動作・感覚を本来の状態に戻す気がしている。同じ1本の線でも手の強弱によって描かれる線は違う。同じ線は二度と引けないかもしれない。

消しゴムもほとんど使わず、構図がおかしくても、歪んでも、間違っても気にせずに描き進めていく。誰にも違うよと言われるわけではないので、絵の基本から外れてもお構いなし。

そして、四苦八苦の末、一応下図が出来ると淡彩で着色となる。この過程が楽しみである。淡彩とはいえ、これは一回勝負、パソコンの作業と違ってやり直しがきかない。緊張感があるが、描かれた線が段々色と共に紙に定着していく。とにかく早く描くようにしているので、長くても1枚1時間ぐらいで完成させる。

実はこのスケッチの成果はそれほど大切ではない。自分の手で描くということは、稚拙な絵でも対象をそれだけ立体構成から、ディテールまで自然にしっかり良く見ているように思う。

建築や街だけでなく、そこで生活する人々、乗物、植物、すべてを有機的に総合的に見て、深く自身で消化し把握している気がする。手を動かすことによって、自分の5感全部で感じ取った対象を身体化しているのかもしれない。

自分の目で深く観察し、身体化された感覚を表現することが必要だということをスケッチ旅行で毎回気付かされるのである。

(豊田 悟)

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