新国立競技場問題について
安倍晋三首相が新国立競技場の計画を白紙に戻して見直すと表明した事は、取り合えず良かったと思う。
けれどこの先どうなるかはまだ解らない。
思い返せば、2年前の2013年8月に建築家の槇文彦さんがこの計画に意義を申し立てたのは、敷地に相応しくないその巨大さと、設計者を選ぶコンペティションの杜撰さに対してだった。
しかし最近になって反対意見が盛り上がった主な理由は建設費が高額過ぎると言う事で、高くなった主な原因は建物全体に屋根を掛ける為、その屋根を掛ける理由はスポーツ競技だけでは運営が赤字になるのでイベントを開催出来るようにする為、とどこまでもお金の問題になってしまっている。
そして今ならまだ間に合う、間に合わないと言う時間の問題。
お金と時間の問題は誰にでも解り易いけれど、国を代表するような建物が安く早く出来ればそれで良いと言えるのだろうか。
51年前の1964年に東京でオリンピックが開かれた時、日本の国は今より貧しかったはずなのに、国立代々木競技場を始めとする数々の優れた建築が作られた。
その時に比べ、今の建築家や建設会社の実力が落ちているとは思わない。
ただ社会が建築に求めるものが変わってしまっただけなのだとしたら、とても悲しい。
(栗原正明)
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