ベトナムの今 【前篇】 ハノイとその近郊

昨年末に現地で活動している知人から誘いがあり、1月11日から4日間ベトナムに行ってきました。学生時代のベトナム戦争のイメージばかりが強く、その国の今については何の予備知識もなしでの短い滞在でしたが、国民の平均年齢が28歳という若い人々の元気な姿が印象的な旅でした。 成田から6時間半で着いたハノイのノイバイ国際空港の新しい国際ターミナルは今年オープンしたばかり市内までの片道5車線の道路も同時に開通とのこと。その近代的な風景は首都ハノイの郊外にも広がっていて、ランドマークとなる超高層ビルや高層マンションが建ち並んでいます。

JWマリオットハノイの外観と周辺のビジネス街と博物館外観

まずは、人口700万人にせまる大都市ハノイの市街地、バイクがひしめく雑踏をタクシーですり抜けて新しいビジネス街のトウリエム地区に一昨年オープンしたJWマリオットハノイホテルへ。全体が龍の形という独特の外観で最上階20m以上あろうかという片持ちの部分がその頭になるそうでそう言われればなるほど。さらにそこが水を湛えたプールなので、地震がない国とはいえ思わず構造上大丈夫かと余計な心配をしてしまいました。隣にある博物館も逆三角形でダイナミック、でも丘の上とか周りのランドスケープを一体にした造形としたらより引き立つのではといろいろと想像力を刺激してくれます。

旧市街の夜の風景

そんな郊外の新しい街とは対照的に旧市街にはバックパッカーも多い屋台村が広がっています。プラスチックのテーブルと椅子に座りビールを一杯。活気にあふれた一角ですが、トイレと聞いて行った先に便器は無く、でもそこらへんがその場所らしいのは確かのようでした。

躯体工事が終わったマンション建築現場
完成予想図
モデルルーム

翌朝は現地の現場視察。コンクリート躯体が完了した30階建てのマンションに足場はなく、その見慣れない風景に頻繁にシャッター押してしまいました。ただこんな現場で今後どうやって仕上げ工事をするのだろうと同行した熟練の現場管理の専門家と首をかしげていたのですが、海外経験豊富な知人に聞いたところ、日本とは発注形態が異なり、躯体工事業者は一旦足場を撤去し、仕上業者は別に足場を設置するのだそうです。柱梁と床のコンクリートの質はなかなか良さそう。外壁はコンクリートレンガにモルタルの上塗装が一般的、地震がないとはいえ、台風の影響や雨季のスコールは凄いらしいのに耐久性耐候性をどう考えているのか残念ながら今回は踏み込んで話を聞くことはできませんでした。そうやって仕上がった別のマンションのモデルルームを見学。現在完成している100㎡から200㎡で数千万円から1億円近いという価格の物件は高額の給与所得者でも手が届かないといいます。それが1千万円以下の実需に対応する物件にこれからシフトしていくのだと聞きました。日本の技術や製品に対する信頼度は高く、現地の人たちも日本に対するさまざまな期待があるようです。

バンブー・ウイング(竹とスチールワイヤーによるレストラン)
研修施設(石と藁と竹と土)

午後は、日本で学んだベトナム人の建築家ヴォ・チョン・ギアの「バンブー・ウイング」のあるリゾートを訪れました。ハノイから1時間余りです。芝生のマウンドに円弧を描く石の壁に囲まれ、竹のトラスに藁ぶきの屋根をもつ研修施設ではちょうど真剣なセミナーが行われていました。その閉ざされた佇まいに向かい合うようにオープンなバンブー・ウイングが四方を水盤に囲まれたロケーションで建っています。一般的な我々も知っている竹と肉厚な竹を組み合わせて、計算からではなく経験とモックアップで構造を決めていくとのことです。自然素材でのランドスケープごとのデザインに感動しました。 たまたま見学できたハノイの事務所には、さまざまなスケールの粘土や竹の模型が所狭しと天井からつられていました。

ヴォ・チョン・ギア ハノイ事務所

【後編】ホーチミンとその近郊 に続く

(荻津郁夫)

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