餅は餅屋

先月末、事務所の引っ越しをした。移動距離は1キロメートル足らずだが、天井までの高さ、間口9m以上の本棚にぎっしりの書籍があるので、重量級の引っ越しである。引っ越し業者の営業マンは段ボール箱でざっと100箱と見積もった。

引っ越し業者が置いていった段ボールに本を詰め込むと、本の紙質にもよるが1箱30キログラムほどにもなる。私にはやっと持ち上げることができる重さだ。

仕事が忙しい中の作業でもあって、引っ越し前夜は数名で夜を徹しての梱包作業。朝方になって大量の段ボール箱が部屋に積み上がったが、梱包が間に合わない荷物はまだまだたくさん残っている。手は荒れるし、足腰もきつく途方に暮れた。しかし、この日に全て運んでもらわなくては、あとがもっと大変になる。

営業マンによれば、3名チーム、トラック1台で2便に分けて運ぶので、夕方までかかるとのことだった。とにかく2便に間に合うようにと梱包作業を急いだ。

引っ越し当日の朝、やって来たのは特にマッチョにはみえない男性の4人チーム。

重くて途中で逃げちゃうのではないかという心配もあって「本ばかりで重くてすみませんがよろしく」と言っているそばから、重い段ボールをひとりが2箱持ち上げた上に別のメンバーがさらにもう1箱を載せる。ひとり3箱、およそ100キログラムずつをトラックに運んでは小走りで戻り、また運び出すというリレーが始まった。

力の差は歴然だった。

これではすぐに追いつかれてしまうではないか。聞いてみれば、当日はトラック2台、人員4名の手配がついたということもあり、昼過ぎには終わらせて午後は別の現場に行くとのこと。彼らはアルバイターではなくまさに引っ越しのプロ集団。

1日2件を行う二毛作は当たり前で、単身者の引っ越しなどは、同じチームで日に3件を行うそうだ。

部屋に山と積まれた書籍の段ボールは、残りの荷物を梱包し終わる前にトラックに消えた。冷蔵庫や数台のデスクやプリンターなど比較的大きなものは梱包布材で包み、梱包が間に合わない多くの小物もベランダの多くの鉢も「運んじゃっていいでですね」と言いながら手際よく段ボールを組み立てて、納められ、あっという間にトラックに消えた。そして、昼過ぎには全ての荷物が移転先に運び込まれていた。

気持ちよい鮮やかな仕事振りだ。

力業(ちからわざ)ということばがあるが、彼らの力とわざは立派な職能だと思う。

チームワーク、梱包の工夫、トラックの積み込みなど一切のムダの無い仕事には舌を巻いた。彼らプロがいなければ、引っ越しはいつまでも終わらなかったろう。

あらためて『餅は餅屋』を実感したのだった。

さて、移転先に山と積まれた書籍の段ボールは、いまだ恰好の猫の遊び場になっている。この段ボール箱が一つ残らずなくなるのはいったいいつになることやら。。

(神田雅子)

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