リムジンの車窓から
夜の方がその街の真の空気を感じられるのではないかと思うことがある。
旅先では昼間より日が暮れてから到着した土地のほうが印象に残ることが多い。
街の空気の質感を真っ先に知らせてくれるのは、夜の灯りの様相である。
実際に空気に触れなくても車窓から湿度までも感じとることができる。
横浜に暮らしてわずか10年ばかり。それも横浜とは名ばかりの浜も港もない街に暮らしている。
それでも旅の帰りに空港からリムジンに揺られ、ベイブリッジにさしかかる辺りで港の夜景が見えてくると「ただいま帰りました」と思うようになった。
横浜は夜。海から立ちのぼる湿気にとける灯りがたまらなくいい。
(神田雅子)
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