窓からの風景、みなとみらい2002-2008
[2008.08]
横浜駅構内の結構な人出の中にも、どことなくお盆の穏やかな時間の流れが感じられ、外に出てもさすがに工事現場も静かにお休みで、お隣中国からのオリンピックの高揚感に支えられてさまざまな不安は先送りしているかのように、あと少しの夏の盛りを惜しみつつ暑い日ざしにキラキラと照り映える横浜の都心風景です。
ただし、今年は窓の外の青空が気分的には半分になりました。いま建設中のマンションが倍の高さになると、さらに青空が半分になってしまうようにも思えます。ここ2~3年で周りの空き地や駐車場そして既存の建物がほぼ全て高層のオフィス、マンションに建て代りました。日産本社ビルも外観の全貌が見えてきて、きっと来年には就業人口もどっと増えて、今はがらがら空きに見える新築オフィスビルも活況を呈するのでしょう。
[2007.08]
因みにこれは1年前の風景です。ランドマークタワーが高層マンションの屏風に囲まれて息苦しそうでしたが、対岸の出来事で、あとどのくらい高層マンションが建つのかねえ、お互い窓からはどんな景色が見えているのかねえ、などと慮ってみたのでした。ところがついに、あっという間に事件は眼の前に迫ってきました。もちろん建設計画や地域の青写真もずいぶん前から知ってはいたのですが、やっぱり、えっほんとに、当初の予定からはずいぶん遅れているとは聞いてたけど、計画どおり建てるんだ、という驚きが正直な感想です。
[2002]
さらにこれは6年前。2002年には遮るものもなく、ランドマークタワー、クイーンズイースト、インターコンチネンタルホテルと連なる建物の稜線が心地よく大桟橋からベイブリッジへとながれ、空き地と水面と空の多い風景が窓越しに何かホッとする気分を感じさせていてくれた記憶があります。15年前にランドマークタワーができる以前から見続けていますが、この頃が僕にとっては都市の胎動を最も感じさせてくれた時期だったような気がします。と同時に、巨大なクレーンの動きに見入りながらも、自分より背の高いアンテナ塔を乗せたビルができたのが奇異に感じられたのを覚えています。この頃がターニングポイントだったでしょうか。
計画された時点でのイメージ図や完成予想図から漂う都市の気配と現実に出来上がった風景とのギャップは、おそらく個々の建物が完成して初めて気がつくことになるのだと思います。地域住民にしても計画当事者である役所やプランナーにしても。
あるいはむしろそんなギャップを感じたり考えたりすることなく、出来上がったものを楽しめるだけ楽しもうとするのが一般的な社会の趨勢なのかもしれません。飽きたらまた次があるさ、と。
6年前に何かホッとする気分を感じたのは、空き地(実はれっきとした建設予定地だったのですが)や盛土の堆積場といったどうなるかわからない場所、あいまいな空間が残っていたからだと思われます。
いまや全ての場所がきれいに安全に整備され、投資された資金が回収できるシステムによって建設された建物に覆われてしまうと、つまり完成予想図に近づけば近づくほど、逆に都市としての魅力や夢が見出せず、猥雑さや逃げ場のない息苦しさを感じてしまうのです。
(荻津郁夫)
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