箱根細工
子供の頃、初めて箱根細工を手にした時のことを憶えている。
その精緻な造りに仰天するのは誰でも同じだろう。こんな膨大な数の小片をよくも根気よく組み合わせたものだと、気が遠くなるような作業をすぐさまイメージしてしまうのだ。造り手の思う壷である。だが、驚きが大きい分だけ冷めるのも早い。
次からは「これ箱根細工だよね」とか、もうシタリ顔である。
箱根細工で二度目に感心するのは、それが小片を組み合わせたのものではなくて、金太郎飴のように色とりどりの棒状の木片を合わせておいてからスライスするのだという仕掛けを知る時だろう。「なあんだ大量生産かあ」と、ちょっとガッカリしながらも一方で「ナルホドね」と納得する。2Dから3Dへ視点を上げさせられるからだろう。
箱根細工で三度目の感心をした。写真の箱ものは数年前に湯河原で見つけたものである。箱根細工師にも若い新しい動きがあるのだと、土産物屋の店主が嬉しそうに自慢していた。この細工のアイディアはシンプルで、だからエレガントだと思う。
(増田 奏)
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