三角定規

画像左側は昨日まで使っていたもの。

右は狭くなってしまった有隣堂の製図用品売り場で最近購入したもの。

左が機能しなくなったためニューフェースの登場だが25年後の今も機能部はあまり変わっていない。

勾配調整ねじの材質、頂部の形状、ステッドラーの製品番号、セルの面取り角度、フォントなどが細かな変更。

だが、だが三角形の先端がストーンとカットされているのは如何に。この先端があくまで先細りになっているところに三角定規の意味があると勝手に思い込んでいる小生にとってかなり残念。

「まだ手書きの図面なんですか?」といわれそうな昨今であるほどパソコンのハードソフトの発達は目覚しく、それが可能にする建築形態も次々と生み出される。

「自分の手に教えられる」-何の気なしに手で描いた線が新たな形の発見やアイデアの発展に繋がる。そのような体験を多くしてきただけに未だに鉛筆は手放せずスケッチや実施設計のアイデア出しに三角定規も欠かせない。

 実施設計図はスタッフがパソコンで描くが最近、手書きで久し振りに描いて見た。平行定規と三角定規がカチカチあたる音がやけに響く。キーボードをたたく音やマウスをクリックする音とは異なり、はた織り職人のような気分。

 画像に話しを戻すと、左の定規は25年の歳月を物語っている。使い続けた味わいが出ていてニューフェースには及びも付かない。25年たてば同じでは?いやいや左の方は最初からそれなりの風格があった記憶があります。

この三角定規という道具からも教えられることは、「使い込んでゆくに従い骨董品のような風格さえ出てくるもの、時間に耐えられるものをデザインせよ。」でしょうか。

京都龍安寺の石庭を囲む油土塀は土の色に混じり色あせた黒やオレンジの錆色が出ておりこの色合いを見たさに訪れた事がある。先人は数百年後の今を予想してデザインした?か不明だが、三角定規の25年掛かってできる味わい、仕上げ、この塀の数百年かかる仕上げいずれも時間のなせるわざだ。

軒の出が無く内外装とも白のモダン住宅は多いがどうやって時間に耐える?

最近完成した京都の老舗旅館が経営するサロンを訪れた。北欧家具や坪庭を引き立てるため1階は真っ白のインテリア。町屋の年月を経た土壁は2階の吹き抜け部に残している。

龍安寺、石庭と土壁のコントラストに触れる京都である事,建物に造詣が深いオーナーのデザインであることで白の部分がどのような味を出しているか25年後ぐらいにも是非訪れてみたい。

そもそも長い時間を想定していないのであれば、それはそれだが。

(藤本幸充)

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